都市部集中とは異なる、分散型インフラとしての可能性

地方の遊休不動産をデータセンター候補地として検討する視点

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May 27, 2026

データセンターは、これまで東京圏や大阪圏など、大都市圏を中心に整備されてきました。

クラウドサービス、金融システム、企業向けITサービス、動画配信、通信ネットワークなどは、利用者や企業が集中する都市部との接続性が重要になるためです。そのため、データセンターは需要地に近い場所、通信インフラが整った場所、事業者や技術者が集まりやすい場所に集中してきました。

一方で、近年はAI、クラウド、IoT、動画配信、業務システムのクラウド化によって、データセンター需要がさらに拡大しています。都市部では、土地の確保が難しく、電力供給や建設コスト、周辺環境との調整も重くなりやすくなっています。

この流れの中で、地方の遊休地や遊休施設をデータセンター候補地として見直す考え方が出てきています。

地方には、工場跡地、倉庫跡地、低稼働施設、空き事業所、未利用地、産業団地内の余剰地など、都市部とは異なる不動産資源があります。これらは、住宅や商業施設としては需要が弱い場合でも、電力、通信、災害リスク、周辺環境などの条件が合えば、デジタルインフラの候補地として検討できる可能性があります。

ただし、地方に土地があるからといって、すぐにデータセンター候補地になるわけではありません。

地方分散には、メリットと課題の両方があります。土地が広い、周辺に住宅が少ない、産業系エリアがある、自治体が企業誘致に前向きである、といった利点がある一方で、電力の確保、通信インフラ、技術者確保、災害時の復旧体制、住民理解、地域メリットの説明などが課題になります。

そのため、地方の遊休不動産をデータセンター候補地として検討する場合、単に「空いている土地がある」という視点ではなく、「地域インフラとして成立するか」という視点で見ることが重要です。

地方分散は、都市部集中の補完として考える

地方のデータセンター候補地を考える際に大切なのは、都市部と地方を対立的に見ることではありません。

都市部には都市部の役割があります。大都市圏には企業、利用者、通信拠点、クラウド需要、金融機関、IT人材が集中しています。そのため、低遅延性や接続性を重視するデータセンターは、今後も都市部近郊に必要です。

一方で、すべてのデータセンター機能を都市部に集中させることには限界があります。

土地の取得難易度、電力供給の制約、建設コスト、災害リスクの集中、周辺環境との調整などを考えると、用途によっては地方に分散する意味があります。

たとえば、バックアップ拠点、災害対策拠点、地域分散型のデータ処理拠点、製造業や研究機関に近い計算拠点、再生可能エネルギーと組み合わせたデータセンター、AI推論やエッジ処理の拠点などは、地方で検討できる可能性があります。

日本でも、デジタル田園都市国家構想やデータセンター地方分散の議論が進められてきました。地方にデータセンターを分散させることは、単なる土地活用ではなく、通信、電力、地域産業、災害時のレジリエンスを含むインフラ政策の一部として捉える必要があります。

つまり、地方の遊休不動産は、都市部データセンターの代替ではなく、補完的な役割を持つ可能性があります。

都市部に近い高密度処理拠点と、地方の分散型・バックアップ型・特定用途型の拠点を組み合わせることで、データインフラ全体の安定性や柔軟性を高める考え方です。

地方の遊休不動産が候補になり得る理由

地方の遊休不動産がデータセンター候補地として検討される理由は、いくつかあります。

まず、都市部と比べて土地を確保しやすい場合があります。大都市圏では、まとまった土地の取得が難しく、既に住宅、商業施設、物流施設、オフィスなどとの競合が起きています。一方、地方には工場跡地、倉庫跡地、未利用地、産業団地内の空き区画など、一定規模の土地が残っている場合があります。

次に、周辺環境との相性です。

産業団地や工業地域、物流施設が集まるエリアであれば、設備用途としての初期検討がしやすい場合があります。住宅密集地に近い都市部と比べて、騒音、搬入、夜間保守、非常用設備などの調整が進めやすいケースもあります。

また、自治体が企業誘致や産業再生に前向きな場合、データセンターを地域産業の新しい柱として検討できる可能性があります。特に、工場閉鎖後の跡地や人口減少により利用が進まない土地では、デジタルインフラ用途としての活用が地域課題の解決につながる場合もあります。

一方で、地方なら何でもよいわけではありません。

データセンターには、大量の電力、安定した通信、災害対応、保守体制、長期運用が必要です。土地が安い、広い、空いているというだけでは候補地として不十分です。

地方の遊休不動産を見る場合は、土地の条件だけでなく、地域全体のインフラ条件を確認することが重要です。

電力は地方候補地の最大の論点になる

地方の遊休不動産をデータセンター候補地として検討する際、最も大きな論点になりやすいのが電力です。

データセンターでは、サーバー、通信機器、空調設備、監視設備、非常用設備などが常時稼働します。特にAI向けデータセンターでは、非常に大きな電力を必要とする場合があります。

地方には土地があっても、必要な電力を確保できるとは限りません。

近隣に十分な送配電インフラがあるか。
変電所や送電線との距離はどうか。
受電設備を設置できる敷地があるか。
電力会社との協議に進める余地があるか。
再生可能エネルギーや地域電源との接続可能性があるか。

このような点を初期段階で確認する必要があります。

海外では、AIデータセンターの増加によって、地域の電力網や電力料金への影響が住民の関心事になっています。データセンター誘致によって地域インフラが強化される可能性がある一方で、電力需要の増加が地域の電力コストや系統負荷に影響するのではないかという懸念も出ています。

地方でデータセンターを検討する場合も、単に「電力が使えるか」だけでは不十分です。

地域の電力インフラにどのような影響を与えるのか、増強費用を誰が負担するのか、地域住民や既存企業の電力利用に影響しないか、脱炭素や再生可能エネルギーとの関係をどう整理するかが重要になります。

地方の遊休地をデータセンター候補地として評価する際には、土地そのものよりも先に、電力の現実性を確認することが必要です。

通信インフラは地方分散の成否を左右する

地方にデータセンターを置く場合、通信インフラも重要な条件になります。

データセンターは、データを保管するだけの施設ではありません。外部との通信によって価値を発揮します。そのため、光ファイバー回線、通信事業者の対応、複数回線の確保、主要都市や利用者との距離、通信遅延、災害時の通信冗長性が重要です。

地方の遊休不動産の場合、土地や建物の条件は良くても、通信環境が十分でないことがあります。

特に、大規模なクラウドサービスや外部顧客向けのデータセンターを想定する場合、高品質で冗長性のある通信回線が必要です。一方で、地域内の特定用途、企業のバックアップ、エッジ処理、製造業のデータ処理などであれば、求められる通信条件は変わります。

つまり、地方データセンターの可能性は、用途によって大きく変わります。

都市部と同じ機能を地方で担うのか。
地域分散型のバックアップ拠点にするのか。
工場や研究施設に近いAI処理拠点にするのか。
自治体や地域企業向けのデータ処理拠点にするのか。

この用途の仮置きによって、必要な通信条件も変わります。

地方の遊休不動産を評価する際には、通信インフラを単に「ある・ない」で見るのではなく、その土地で想定できるデータセンター用途に対して十分かどうかを見る必要があります。

地域受容性を軽視しない

地方でデータセンター候補地を検討する際、見落とされやすいのが地域受容性です。

データセンターは、地域にとって期待される施設である一方、懸念も生みやすい施設です。

期待としては、税収、遊休地の活用、企業誘致、通信インフラの強化、電力インフラの更新、地域産業の高度化などがあります。工場跡地や空き施設を再活用できれば、地域の景観改善や土地の有効活用にもつながる可能性があります。

一方で、懸念としては、電力消費、水利用、非常用発電設備、騒音、景観、工事車両、地域への実質的な雇用効果、住民への説明不足などがあります。

海外では、データセンター計画に対して地域住民や環境団体が反対する事例が増えています。水不足の地域での水利用、電力消費の大きさ、バックアップ電源の排出、住民説明の不足などが問題視されることがあります。

これは日本でも無視できません。

地方自治体が誘致に前向きであっても、住民や近隣企業が納得しなければ、事業は進めにくくなります。特に、地方では地域コミュニティとの関係が重要になるため、早い段階から地域にとってのメリットと懸念を整理する必要があります。

データセンターは、地域に大量の人流を生む施設ではありません。そのため、商業施設や工場のように分かりやすい雇用効果を説明しにくい場合があります。

だからこそ、地域への説明では、単に「投資額が大きい」「新しい産業である」と言うだけでは不十分です。

地域のインフラがどう改善されるのか。
遊休地がどう再生されるのか。
税収や地域企業への波及があるのか。
災害時のデジタル基盤として意味があるのか。
電力や水の負荷にどう対応するのか。

こうした点を整理することが重要です。

自治体との関係は早い段階で設計する

地方の遊休不動産をデータセンター候補地として検討する場合、自治体との関係も重要です。

データセンターは、土地利用、建築、電力、通信、防災、環境、企業誘致、税制、地域産業政策など、複数の行政領域に関わります。

そのため、候補地としての可能性を検討する段階から、自治体との対話余地を意識しておく必要があります。

自治体側にとって、データセンター誘致は魅力的な面があります。大規模な設備投資、固定資産税、遊休地活用、地域のデジタル基盤強化、企業誘致の実績づくりなどにつながる可能性があるためです。

一方で、自治体側にも懸念があります。

電力や水など地域資源への負荷、住民説明、環境影響、雇用創出効果の小ささ、災害時対応、景観、地域産業との関係などです。

そのため、土地所有者や事業者側は、自治体に対して単に「データセンターを誘致したい」と伝えるだけではなく、地域にとってどのような意味があるのかを整理しておく必要があります。

特に地方では、自治体が持つ企業誘致施策や産業用地情報、補助制度、道路・上下水・通信インフラ整備、地域防災計画などと関係する可能性があります。

候補地の一次診断では、自治体との対話に進む前に、その土地がどの行政論点に関係しそうかを整理しておくと、次の検討が進めやすくなります。

地方の遊休不動産では「雇用」だけで語らない

データセンター誘致では、地域経済への貢献が重要な論点になります。

しかし、地方の遊休不動産をデータセンター候補地として検討する場合、雇用創出だけを前面に出すと説明が弱くなる可能性があります。

データセンターは、建設時には多くの工事関係者が関わる場合がありますが、運用段階では、工場や商業施設ほど多くの常駐雇用を生まないことがあります。特に自動化が進んだ施設では、雇用効果は限定的になる場合があります。

そのため、地域への価値を雇用だけで説明するのではなく、より広い視点で整理する必要があります。

遊休地や工場跡地の再活用。
固定資産税などの税収。
電力・通信インフラの更新。
地域企業のデジタル化支援。
災害時の情報基盤強化。
再生可能エネルギーや排熱利用との組み合わせ。
地域の産業イメージ向上。

このような複数の価値を整理することが重要です。

地域側から見たときに、「土地は使われるが、地域には何が残るのか」という疑問が出ることがあります。その疑問に対して、事前に説明できる材料を持っておくことが大切です。

地方データセンターは、地域の産業政策や不動産活用とつながる可能性があります。ただし、その価値をきちんと設計しなければ、単なる大規模電力消費施設として受け止められるリスクもあります。

水利用・騒音・環境影響も確認する

地方のデータセンター候補地を検討する際には、電力だけでなく、水利用、騒音、環境影響も確認が必要です。

データセンターの冷却方式によっては、水を使用する場合があります。地域によっては、水資源への影響が懸念されることがあります。海外では、水不足地域でのデータセンター計画に対して、住民や環境団体が懸念を示す事例もあります。

騒音も重要です。

データセンターでは、空調設備、ファン、非常用発電機、変電設備、工事車両などが騒音源になる場合があります。住宅地から離れている土地であっても、夜間の低周波音や非常用設備の試運転が問題になる可能性があります。

また、非常用発電設備を設置する場合、燃料保管、排気、消防、環境規制の確認も必要になります。

地方の遊休不動産は、都市部よりも周辺環境に余裕がある場合があります。しかし、だからといって環境影響を軽視してよいわけではありません。

むしろ地方では、地域住民との距離が近く、説明不足が問題になりやすい場合があります。

初期段階では、詳細な環境影響評価まで行う必要はありません。ただし、水利用、騒音、排気、景観、工事車両、近隣施設への影響など、地域側から質問されそうな論点を整理しておくことが重要です。

地方候補地は用途を絞ることで現実性が高まる

地方の遊休不動産をデータセンター候補地として見る場合、最初から大規模クラウド施設を想定する必要はありません。

むしろ、地方では用途を絞ることで現実性が高まる場合があります。

たとえば、地域企業向けのバックアップ拠点、製造業の画像解析や設備データ処理、自治体や地域インフラのデータ保管、災害対策用の分散拠点、エッジAIの処理拠点、研究施設や大学との連携拠点などが考えられます。

これらは、大規模なハイパースケールデータセンターとは異なる考え方です。

必要な電力容量、通信条件、建物仕様、運用体制も変わります。用途を絞ることで、既存建物や小規模な土地でも検討余地が出る場合があります。

地方の遊休不動産を検討する際に重要なのは、「この土地で巨大データセンターができるか」だけではありません。

「この地域で必要とされるデータ処理機能は何か」
「この土地や建物の条件に合う規模はどの程度か」
「地域企業や自治体と接点を作れる用途はあるか」
「大都市圏のバックアップや分散拠点として意味があるか」

このように用途から逆算することで、地方候補地の見方が変わります。

地方の遊休不動産で重要なのは入口整理

地方の遊休不動産をデータセンター候補地として検討する際に重要なのは、いきなり事業化を決めることではありません。

まずは、その土地や建物が、データセンター候補地として検討余地を持つのかを整理することです。

特に重要なのは、土地面積、形状、接道、既存建物、過去の用途、電力、通信、災害リスク、周辺環境、自治体との関係、住民理解、地域メリット、用途の仮置きを整理することです。

この入口整理ができていると、社内検討や外部事業者との情報交換が進めやすくなります。

反対に、土地情報や地域条件が曖昧なまま相談すると、話が広がりすぎて、具体的な判断につながりにくくなります。

地方の遊休不動産は、単なる未利用資産ではありません。条件次第では、分散型のデジタルインフラを支える不動産として再評価できる可能性があります。

ただし、そのためには、土地の広さだけではなく、電力、通信、災害リスク、地域受容性、自治体との関係を含めて検討することが重要です。

地方にあるからこそ可能性がある一方で、地方にあるからこそ丁寧に整理すべき論点もあります。

Asset Marsの支援内容

株式会社Asset Marsでは、土地所有者様、不動産会社様、デベロッパー様、地方の遊休地・工場跡地・倉庫・物流施設・既存建物を保有する企業様向けに、データセンター候補地の一次診断・スクリーニング支援を行っています。

当社では、地方の遊休不動産について、土地条件、建物条件、過去の用途、電力・通信に関する初期確認項目、災害リスク、周辺環境、自治体との関係、地域受容性、活用スキームの方向性などを整理し、検討の入口となる情報をまとめます。

当社の支援は、データセンター事業化や電力・通信インフラの確保を保証するものではありません。あくまで、初期段階において「この地方不動産に検討余地があるか」「どの点が懸念になりそうか」「次に誰へ相談すべきか」を整理するための支援です。

住所、概算面積、現在の利用状況、既存建物の概要、過去の用途、周辺環境、自治体との関係性が分かる資料があれば、詳細な計画が固まっていない段階でも初期相談は可能です。

地方の遊休地・遊休施設の新たな活用方法として、データセンターやデジタルインフラ用途に関心がある場合は、まずは情報交換からご相談ください。

参考・参照資料

  1. CBRE Japan, Generative AI and Data Center Decentralization #2
    日本におけるデータセンター地方分散、東北・北陸・四国など地方立地の動向を考える参考資料として参照。(CBRE Japan)
  2. Brookings, The local implications of data centers for rural communities
    地方・農村地域におけるデータセンター開発の税収、雇用、インフラ負荷、地域影響を考える資料として参照。(Brookings)
  3. World Resources Institute, 7 Ways Data Centers Affect US Communities
    データセンターが地域の電力網、水、土地利用、住民生活へ与える影響を整理した資料として参照。(World Resources Institute)
  4. Tao et al., Global data center expansion and human health, 2025
    データセンター拡大による騒音、環境、地域住民への影響を考える研究として参照。(PMC)
  5. Reuters, Equinix faces challenge to Cape Town data centres over environmental concerns
    水利用、電力需要、排出、バックアップ電源などをめぐる地域側の懸念事例として参照。(reuters.com)