産業用ロボットの診断は、まず“観察と仮説”から始まる

“動かない理由”の見つけ方

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Jun 26, 2025

はじめに

産業用ロボットは、今や製造業・物流業において不可欠な生産設備です。
しかし、稼働停止や不調を訴えるロボットに対し、「どこが悪いのかがわからない」という現場の声は少なくありません。

多くの場合、メーカーに修理を依頼すると、「一式交換」「制御ユニットの入れ替え」「買い替え推奨」といった提案が返ってきます。
これは確実な手段ではあるものの、費用・時間・柔軟性の観点では必ずしも現場ニーズに合致しているとは言えません。

Asset Marsでは、こうした状況に対して「診断重視」のアプローチを取り、最小限かつ最適な修復を目指しています。

診断の基本原則:まず、観察。次に仮説。

不調ロボットに対する診断は、いきなり分解やパーツ交換から始めるものではありません。
私たちが重視しているのは、「現場情報の聞き取り」と「系統立てた観察」です。

【ステップ1】ヒアリング:いつから・何が・どこで

  • 異常の発生時期・頻度・状況
  • 操作ログ、現場の気温・湿度、作業物の内容
  • トラブル時の動作パターン、オペレーターの体感

ここで収集した情報は、故障部位の予測に直結します。
不調の背景には、必ず“環境・履歴・兆候”の3要素があると私たちは考えています。

【ステップ2】動作診断:全軸の再現テスト+応答評価

  • 各関節の起動タイミングと移動量のズレ
  • サーボ負荷のリアルタイムモニタリング
  • リミット制御・ソフトエラーの履歴表示
  • ジャーク(加速度の変化)と振動パターンの可視化

問題のある軸や動作フェーズを特定するために、可視化された数値ベースの再現テストを行います。

【ステップ3】制御系・I/O診断

  • PLCやロボットコントローラの通信遅延・切断履歴
  • エラーコードの解析(EEPROM/RAMエラー、冷却異常など)
  • 入出力(I/O)制御の不整合チェック

ソフトウェア・電気系統の故障は症状が曖昧かつ再現性が低いため、エラーログの継続蓄積と定期診断が不可欠です。

【ステップ4】物理チェックと機構部の診察

  • モーター・減速機の摩耗音・温度上昇の有無
  • ケーブル断線、端子ゆるみ、基板の電解液漏れなど
  • エンコーダ異常/スケールセンサのズレ

ここで初めて分解・開放点検に入ります。
私たちは「交換前に診る」を徹底し、交換判断は“最後の手段”として位置付けています。

診断の目的は「原因の見える化」

診断とは、「どこが悪いか」を知るだけでなく、「どうすれば復帰できるか」を設計するプロセスです。
Asset Marsでは、不調の原因を技術言語で整理し、現場担当者が納得できる解像度で提示することを重視しています。

まとめ:直す前に、診る。判断する前に、仮説を立てる。

産業用ロボットの故障対応において、“勘”や“決め打ち”での対応は、
時にコスト・時間・信頼の損失を招くことがあります。

私たちは「不調=診断対象」ととらえ、メーカーとは異なる立場から現場に寄り添うことで、
安易な全交換ではなく、本当に必要な修復のみを提案するスタイルを貫いています。

Asset Mars|ロボット診断サービス概要

  • 対象機種:主要国産メーカー(FANUC/安川/川崎/三菱/デンソー 等)
  • 対応内容:動作不良、異音、エラー頻発、制御系の不具合など
  • 診断形式:出張対応または預かり診断/スポット対応可