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既存建物の構造・立地・搬入動線から見る転用可能性

倉庫や物流施設は、企業が保有する不動産の中でも比較的データセンター用途との接点を考えやすい施設です。
広い床面積があり、天井高があり、大型車両の搬入動線が整っており、工業地域や物流エリアに立地していることも多いため、一見するとデータセンターへの転用可能性が高いように見えます。
特に近年は、AI、クラウド、EC、IoT、業務システムのクラウド化などによって、データを処理・保管するインフラの重要性が高まっています。日本でも、データセンター整備に向けて、電力インフラと通信インフラを一体で考える議論が進んでおり、データセンターは単なるIT施設ではなく、電力・通信・不動産・設備が重なる産業インフラとして見られるようになっています。
このような背景から、倉庫や物流施設についても、従来の保管・配送拠点としての活用だけでなく、データセンター用途としての可能性を検討する余地があります。
ただし、倉庫や物流施設であれば、そのままデータセンターに転用できるわけではありません。
物流施設は、物を保管し、仕分けし、出荷するための建物です。一方、データセンターは、サーバーや通信機器を安定稼働させるための施設です。求められる電力、通信、空調、セキュリティ、設備冗長性、床荷重、配線計画、保守体制は大きく異なります。
そのため、倉庫・物流施設をデータセンター用途で検討する場合、最初に行うべきことは、すぐに改修計画を立てることではありません。まずは、その施設が候補として検討に値するか、どの点に可能性があり、どの点が制約になりそうかを初期段階で整理することが重要です。
倉庫・物流施設がデータセンター候補として検討される理由は、建物や敷地の基本条件にあります。
一般的な倉庫や物流施設は、広い床面積を持ち、大型車両の出入りを前提にした接道や搬入動線が整っていることが多くあります。また、郊外や工業系エリア、物流集積地に立地していることも多く、住宅密集地よりも設備用途を検討しやすい場合があります。
データセンターでは、サーバーラック、電源設備、通信設備、監視設備、非常用設備などを配置する必要があります。そのため、建物内外に一定のスペースがあること、設備搬入がしやすいこと、保守車両が出入りしやすいことは、初期検討上の利点になります。
また、物流施設は比較的新しい建物も多く、一定の耐震性や防火性能、床面積、構内動線を備えているケースがあります。既存建物を活かすことができれば、新築よりも検討期間や初期投資を抑えられる可能性があります。
一方で、物流施設として優れていることと、データセンターとして使いやすいことは同じではありません。
倉庫は、荷物を置くための建物です。データセンターは、電力と通信を安定的に使い続けるための施設です。そのため、建物の広さや天井高だけでなく、電力容量、通信環境、設備配置、床荷重、空調負荷、セキュリティ、災害リスクなどを総合的に確認する必要があります。
海外では、物流不動産や産業用不動産を手がける大手企業が、データセンター領域に関心を強めています。
たとえば、Prologisは物流不動産の大手ですが、データセンター開発にも取り組んでおり、土地、電力、開発力を組み合わせた事業展開を打ち出しています。Panattoniも、産業・物流不動産の開発実績を背景に、データセンター開発に進出しています。
ここで重要なのは、物流施設そのものを単純にデータセンターに置き換えているというより、物流不動産で培った土地取得、開発、許認可、建設、電力調整、テナント対応の力を、データセンター開発に応用している点です。
つまり、倉庫・物流施設とデータセンターの接点は、単なる建物転用だけではありません。
物流施設を持っている会社や物流不動産に強い会社は、広い土地、産業系立地、開発経験、テナント対応、インフラ調整力を持っている場合があります。これらは、データセンター候補地の検討においても重要な要素になります。
日本でも、物流施設や倉庫を保有する企業にとって、将来的にデータセンター用途を検討する視点は持っておく価値があります。ただし、実際に転用できるかどうかは、個別の建物条件とインフラ条件によって大きく変わります。
倉庫・物流施設をデータセンター用途で見る場合、最初に注意すべきなのは、建物の広さだけで判断しないことです。
物流施設は広い床面積を持っているため、サーバーラックを多数置けそうに見える場合があります。しかし、データセンターでは、単にラックを並べればよいわけではありません。
サーバーラックの配置には、電源、通信配線、空調、保守動線、セキュリティ区画、非常用設備、監視設備などが関係します。さらに、電源室、通信室、設備スペース、バックアップ設備、保守用スペースも必要になります。
そのため、倉庫の床面積すべてをサーバールームとして使えるわけではありません。
また、倉庫は荷物の出し入れを前提に作られているため、床の仕様、柱の配置、天井高、断熱性、気密性、電源設備、配線ルートなどがデータセンター用途に合わない場合があります。
既存建物を活かす場合は、建物面積だけでなく、どの範囲をIT機器の設置エリアにできるのか、どの範囲を設備スペースとして使うのか、保守動線をどう確保するのかを整理する必要があります。
広い倉庫であっても、データセンター用途として使える面積は限定される可能性があります。そのため、初期段階では「延床面積」ではなく、「データセンター用途として有効に使える面積」を考えることが重要です。
倉庫・物流施設の転用で特に重要になるのが、床荷重と構造条件です。
データセンターでは、サーバーラック、UPS、バッテリー、配電設備、通信設備、空調関連設備など、重量のある設備を設置します。物流施設でも重い荷物を扱うことはありますが、荷物の置き方とデータセンター設備の配置は異なります。
サーバーラックは一定のエリアに集中して設置されることがあり、設備重量が局所的にかかる場合があります。また、バッテリーや電源設備などは非常に重くなることがあるため、床の耐荷重や基礎の状態を確認する必要があります。
特に、複数階建ての物流施設を活用する場合、上階に重量設備を置けるかどうかは慎重に見る必要があります。スロープ型や多層型の物流施設では、搬入動線は優れていても、データセンター設備の重量や振動、保守性に対して適しているかは別途確認が必要です。
また、柱のスパン、天井高、梁の位置、耐震性、設備開口の可否、配線ルートの確保も重要です。
データセンター用途では、建物構造が運用の安定性に直結します。初期段階では、建築図面や構造資料を確認し、データセンター用途に転用するうえで大きな制約がないかを整理することが必要です。
倉庫・物流施設をデータセンター用途で検討する際、最大のボトルネックになりやすいのが電力です。
物流施設では、照明、空調、搬送設備、冷凍冷蔵設備、一部の自動化設備などで電力を使います。しかし、データセンターでは、サーバーやネットワーク機器を常時稼働させるため、必要な電力容量が大きく変わります。
特にAI向けの高性能サーバーやGPUを扱う場合、電力需要はさらに大きくなります。国際機関のレポートでも、AIやデータセンターによる電力需要の増加が重要な論点として扱われています。
そのため、倉庫・物流施設をデータセンター用途で見る場合、現在の受電容量だけでなく、将来的にどの程度の電力を確保できるか、受変電設備を増強できるか、敷地内に電源設備を置けるか、電力会社との協議に進む余地があるかを確認する必要があります。
既存の物流施設が大きな建物であっても、データセンター用途に必要な電力を確保できなければ、候補地としての優先度は下がります。
反対に、物流施設の中でも、冷凍冷蔵倉庫や自動化倉庫、大型設備を持つ施設では、比較的大きな電力を使用している場合があります。そのような施設では、現在の電力契約や受電設備の履歴を確認することで、検討の入口が見える可能性があります。
初期段階では、電力確保を断定する必要はありません。重要なのは、電力が最重要論点の一つであることを前提に、現在の契約、過去の使用実績、増強余地、設備スペースを整理することです。
倉庫・物流施設には、在庫管理システム、物流管理システム、監視カメラ、入退館管理、配送管理などのために、一定の通信環境が整っている場合があります。
しかし、データセンター用途では、物流施設として必要だった通信環境とは求められる水準が異なります。
データセンターは、外部との通信によって価値を発揮する施設です。そのため、光回線の整備状況、複数キャリアの対応可能性、回線冗長化の余地、主要都市や利用者との距離、通信遅延、災害時の通信確保などを確認する必要があります。
物流施設としては十分な通信環境でも、データセンターとしては不足する場合があります。
一方で、物流施設は幹線道路沿いや産業団地、都市近郊の物流拠点に立地していることが多く、通信インフラの確認余地がある場合もあります。特に、都市圏に近い物流施設や企業集積地に近い倉庫では、用途によっては小規模なデータセンターやバックアップ拠点として検討できる可能性があります。
初期段階では、単にインターネット回線の有無を見るのではなく、データセンター用途として、どの程度の通信品質と冗長性を確保できる可能性があるかを確認することが重要です。
倉庫・物流施設の強みの一つは、搬入動線です。
物流施設は、大型車両の出入り、荷物の搬入、構内移動を前提に設計されているため、設備搬入の面では有利な場合があります。サーバーラック、電源設備、通信設備、空調関連設備などを搬入する際、トラックヤードや荷捌きスペース、構内道路があることは大きな利点になります。
ただし、物流施設としての搬入動線が、そのままデータセンターの保守動線として適しているとは限りません。
データセンターでは、機器の搬入だけでなく、日常的な保守、故障対応、セキュリティ管理、入退館管理、非常時対応が必要になります。保守員がどのルートで入り、どの区画にアクセスできるのか、セキュリティレベルの異なるエリアをどう分けるのか、外部業者の動線をどう管理するのかを考える必要があります。
物流施設では、荷物の出入りが多く、人や車両の動きが活発です。一方、データセンターでは、セキュリティと安定稼働が重視されます。
そのため、既存の物流動線を活かせる部分と、データセンター用途では見直すべき部分を分けて整理することが重要です。
倉庫・物流施設は、工業地域、準工業地域、流通業務地区、郊外の幹線道路沿いなどに立地していることが多くあります。こうしたエリアは、住宅地よりも設備用途との相性が良い場合があります。
ただし、周辺環境は必ず確認する必要があります。
データセンターは24時間365日稼働する施設です。非常用設備、保守車両、工事、空調設備、電源設備などにより、騒音や近隣対応が論点になる場合があります。
物流施設として使われている間は問題がなかった場所でも、データセンター用途に変わることで、近隣説明や行政との協議が必要になる場合があります。
また、用途地域や建築基準法、消防、条例、地区計画、開発許可なども確認が必要です。既存用途が倉庫であっても、データセンター用途への変更や大規模改修を行う場合には、法的な確認が必要になる可能性があります。
特に、複数用途が混在するエリアでは、近隣住民や周辺企業との関係も重要です。データセンターは地域に大量の雇用を生む施設というより、電力・通信・設備投資を伴うインフラ型施設です。そのため、地域に対してどのような意義を示せるかも検討材料になります。
データセンター候補地として倉庫・物流施設を検討する場合、災害リスクの確認は欠かせません。
物流施設は、道路アクセスや広い敷地を重視して立地していることが多く、河川沿い、湾岸部、低地、埋立地、高速道路近接地などに立地している場合があります。これらの場所では、洪水、津波、高潮、液状化、地震、道路寸断、停電、通信障害などのリスクを確認する必要があります。
データセンターは、企業や社会の重要なデータを扱う施設です。そのため、災害時にも安定稼働や早期復旧が求められます。
近年のデータセンター立地研究でも、自然災害リスクや停電リスクは重要な評価項目として扱われています。これは、データセンターが単なる建物ではなく、社会活動を支えるデジタルインフラであるためです。
倉庫としては使いやすい立地であっても、データセンターとしては浸水リスクや停電リスクが大きな制約になる場合があります。
初期段階では、ハザードマップ、過去の浸水履歴、道路アクセス、周辺インフラの復旧性、非常時の保守アクセスなどを確認し、候補地としての優先度を整理することが重要です。
倉庫・物流施設をデータセンター用途で検討する場合、最初から全面転用を前提にする必要はありません。
既存倉庫の一部を活用できるのか、敷地内の未利用部分に別棟を建てる方がよいのか、既存建物を解体して新築する方が合理的なのか、事業者へ候補地として紹介する方がよいのか、複数の方向性があります。
重要なのは、建物転用だけにこだわらないことです。
倉庫建物そのものはデータセンターに向かなくても、敷地条件や立地条件が良ければ、敷地の一部活用や再開発、候補地紹介の余地がある場合があります。反対に、建物が新しくても、電力や通信、災害リスクに大きな課題があれば、候補地としての優先度は下がります。
そのため、初期段階では「建物をそのまま使えるか」だけでなく、「この敷地全体をデータセンター候補地として見たときに、どの活用方法が現実的か」を整理することが重要です。
これは、倉庫・物流施設を持つ企業にとって、売却や賃貸だけではない選択肢を増やすことにもつながります。
倉庫・物流施設をデータセンター用途で検討する場合、社内では既存用途との比較が重要になります。
物流施設として継続利用するのか、賃貸倉庫として貸すのか、売却するのか、再開発するのか、データセンター候補として検討するのか。それぞれの選択肢にはメリットと制約があります。
特に、物流施設は本来の用途である倉庫・配送拠点としての需要もあります。そのため、データセンター用途を検討する場合には、単に新しい分野だからという理由ではなく、既存用途と比較して検討する意味を整理する必要があります。
たとえば、物流用途としての賃料が見込めるのか、老朽化により倉庫としての競争力が落ちているのか、周辺の物流需要が変化しているのか、将来的に別用途への転換を検討する時期なのかといった点です。
データセンター用途は、長期契約や大規模投資につながる可能性がある一方で、電力・通信・設備・法規制・関係者調整などの難易度も高くなります。
そのため、社内検討では、物流施設としての現状評価と、データセンター候補地としての可能性を並べて整理することが重要です。
倉庫・物流施設をデータセンター候補地として検討する際に重要なのは、いきなり事業化を決めることではありません。
まずは、その建物や敷地が候補地として検討余地を持つのかを整理することです。
特に重要なのは、建物構造、床荷重、天井高、搬入動線、受電設備、通信環境、災害リスク、周辺環境、用途地域、既存用途との比較、売却・賃貸・共同事業などの方向性を整理することです。
この入口整理ができていると、社内検討や外部事業者との情報交換が進めやすくなります。
反対に、建物情報や土地情報が曖昧なまま相談すると、話が広がりすぎて、具体的な判断につながりにくくなります。
倉庫・物流施設は、データセンター用途との接点を持つ可能性があります。しかし、物流施設としての強みが、そのままデータセンター用途の強みになるとは限りません。
だからこそ、既存施設の強みと制約を分けて整理し、候補地としての可能性を初期段階で見極めることが重要です。
株式会社Asset Marsでは、土地所有者様、不動産会社様、デベロッパー様、倉庫・物流施設・遊休施設を保有する企業様向けに、データセンター候補地の一次診断・スクリーニング支援を行っています。
当社では、倉庫・物流施設について、土地条件、建物条件、既存用途、電力・通信に関する初期確認項目、災害リスク、周辺環境、活用スキームの方向性などを整理し、検討の入口となる情報をまとめます。
当社の支援は、データセンター事業化や電力・通信インフラの確保を保証するものではありません。あくまで、初期段階において「この倉庫・物流施設に検討余地があるか」「どの点が懸念になりそうか」「次に誰へ相談すべきか」を整理するための支援です。
住所、概算面積、現在の利用状況、既存建物の概要、周辺環境が分かる資料があれば、詳細な計画が固まっていない段階でも初期相談は可能です。
倉庫・物流施設の新たな活用方法としてデータセンターに関心がある場合は、まずは情報交換からご相談ください。