■ 分散型データセンター時代、到来。
クラウド依存から、リアルタイム処理/低遅延通信/地域冗長化へ。
こうしたニーズに応える形で、「分散型データセンター(Distributed DC)」や「エッジDC」の整備が全国で進みつつあります。
ただし、DCの分散化は「スモール化」と同義ではありません。
むしろ、分散設計だからこそ、個別最適ではなく“構造全体の整備力”が求められるフェーズです。
本記事では、Asset Marsが現場で向き合っている「分散型DCの設計フロー」を簡潔にご紹介します。
【全体設計フロー】分散型DCを構築するための6ステップ
Step 1|立地の選定:インフラとの親和性がすべて
分散DCは、「空いてる土地ならどこでもよい」わけではありません。
Asset Marsでは以下の指標をもとに、設置候補地の実行性を判定しています。
- 電力供給力(高圧対応/変電所距離/増設コスト)
- 通信接続性(ファイバー直結可否/基地局網/ISP接続)
- 周辺法規制(用途地域/都市計画/防火・高さ制限)
- 災害リスク(液状化・浸水・停電・搬送経路)
→ 最初の「土地を見る目」が、すべての成功率を決定します。
Step 2|設計コンセプトの策定:誰が使い、どう活用するか
設計思想なしに“箱”だけ作ると、後から使いにくい構造になります。
以下のような観点から、設計コンセプトの言語化を行います。
- エッジ用途か、バックアップ用途か
- 24h/365稼働か、負荷分散用の間欠稼働か
- 冷却方式(空冷/水冷/フリークーリング)
- 耐震/分散冗長性/災害モードの設計有無
- 再エネ・蓄電池・UPSとの統合要否
Step 3|接続系インフラの整備計画
- 電力:受電方式/変圧器容量/高圧対応設計
- 通信:ISP契約・ルート確保・遅延テスト
- 空調:冷却負荷計算+換気設計
- セキュリティ:物理・ネットワーク・出入管理
- 消防:法定義務(泡消火・ガス系・火災検知)対応
ここで重要なのが、「現地のインフラに合わせた設計調整」です。
既製品のDCモジュールをそのまま載せるだけでは、最適な構成にはなりません。
Step 4|施工・設置フェーズの調整力
- 行政申請・開発許可・電気工事申請などの調整
- 輸送・搬入・レベル出し・架台施工
- 配電盤・サーバーラック・UPS設置/試験稼働
- 冷却・消火設備の設定と緊急対応訓練
- 総合試運転・初期負荷テスト・連系稼働開始
細かい段取りと現場判断力が、実行フェーズでは最重要です。
Step 5|稼働開始後のオペレーション設計
- モニタリングシステムの導入と遠隔管理設計
- メンテナンス契約・オンサイト保守体制の整備
- システム異常/電力障害/通信断時の即応設計
- 保守部材・バッテリー・冷却装置の交換周期管理
- ユーザー拠点への接続性のテストとログ確認
稼働後は「使える状態を維持し続ける設計」が問われる領域です。
Step 6|長期利用を見据えた再エネ・蓄電との統合
- 太陽光+蓄電池のBCP構成(自立稼働対応)
- 余剰電力のピークカット利用
- 災害時のバックアップ拠点化構想
- 空調系の再エネ最適化(電力最小化運用)
- 系統連携との需給調整支援(DR設計含む)
データセンターは今後、「地域インフラの一部」として統合的に設計される流れに進んでいきます。
まとめ:どこに置き、どう繋ぎ、どう維持するか。
分散DCの整備は、単なる「施設建設」ではありません。
- 地域に合わせて設計し、
- 個別の制約を読み解いて調整し、
- 維持管理も含めた**“長く使える仕組み”を描くこと**が、本当の意味での構築です。
Asset Marsは、構想から稼働まで一貫して伴走する、現場起点の整備支援パートナーとして、
次のインフラを共に設計していきます。