“ロボット修理難民”にならないために

中古ロボット・海外機のサポート体制と代替部品事情

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Jul 26, 2025

製造業の自動化が進むなかで、多くの現場でロボットの導入が進みました。しかし導入から数年経ち、今あらためて注目されているのが「サポート切れ=修理難民化」のリスクです。とりわけ中古ロボットや海外製ロボットにおいては、このリスクが表面化しやすく、止まってから慌てるケースが後を絶ちません。

この記事では、ロボット修理難民にならないために必要な視点を、EOL(End of Life)対策やリバースエンジニアリング、代替部品供給の実情とあわせて解説していきます。

ロボットの“EOL問題”が生む現場リスク

ロボットを導入する際、多くの企業が本体価格や稼働性能に注目しますが、保守体制の持続可能性まで見通しているケースは決して多くありません。特に中古品や並行輸入された海外機の場合、製造元のサポートがすでに終了している、もしくは最初から存在しないケースすらあります。

これが、いわゆるEOL(End of Life)問題です。メーカーが部品供給やソフトウェア更新を打ち切ることで、故障時の修理が不可能になり、現場は突如として“ロボットレス”な状態に陥ります。生産性はもちろん、取引先への納期や品質保証にまで影響することになりかねません。

リバースエンジニアリングという選択肢

こうした問題に対して、注目されているのが「リバースエンジニアリング(逆設計)」による部品再生です。すでに製造終了した部品でも、現物の形状や素材特性を3Dスキャンや材料解析によって解析し、代替品として製作する技術が進化しています。

ただし、すべての部品がこの手法で再生できるわけではなく、安全認証が必要な部分や、電子制御基板のように複雑なロジックを含む部品については、実用化が難しいケースもあります。そのため、どの部品が“リバース可能”かをあらかじめ把握しておくことが、事前の備えとして重要になります。

代替部品供給の“見えないリスク”

代替部品の供給においても注意点は多く存在します。たとえば、同型機の中古市場からの調達や、OEMメーカーによる汎用互換品の流通はありますが、品質や耐久性がまちまちで、純正品と比較して信頼性に不安が残るケースも見られます。

また、海外製ロボットにおいては、言語・規格の違いによる調達ハードルや、輸送のタイムラグによる修理遅延など、部品到着まで数週間を要することも珍しくありません。

“修理難民”を防ぐ3つの実践ポイント

それでは、ロボットのサポート切れリスクに備えるには、どのような視点が必要なのでしょうか?以下に実践的な対策を3つ挙げます。

  1. 導入段階で「部品供給年限」と「保守体制」を確認する
     価格だけでなく、10年後までの保守提供があるかどうか、部品製造が継続されているかを事前にヒアリングしておくことは必須です。
  2. リスクのある個体には“健全な部品在庫”を確保する
     製造終了が見込まれるモデルに対しては、稼働しているうちにコア部品の予備を確保しておく。これは“保険”と同じです。
  3. 地域の保守ベンダー・修理ネットワークを持つ
     メーカーに頼らず、対応可能な独立系修理業者や、再生部品調達ルートを持っておくことで、緊急時の対応力が格段に高まります。

最後に:ロボットは“使い捨て”ではない

導入から10年を超えてなお、安定稼働しているロボットは数多く存在します。そうした現場には、必ずと言っていいほど“備え”があります。すなわち、サポート体制の見極め、代替部品の確保、そして独自のメンテナンス戦略です。

ロボットは精密機械であり、製造ラインの中核を担う重要資産です。計画的な保守とサポート体制への目配りこそが、設備投資を「持続可能な力」へと変える第一歩なのです。