データセンター運用における電源効率とPUE改善の実践例

データセンターの“電力ロス”はこうして減らす

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Jul 9, 2025

■ 電力消費が利益を削る時代に

近年、データセンターにおける電力コストと環境負荷の最適化は、単なる節約ではなく運用の根幹を左右する経営課題となっています。

中でも注目されているのが、PUE(Power Usage Effectiveness)という指標です。これは、データセンター全体の消費電力をIT機器の消費電力で割った値で、1.0に近いほど効率的な運用を意味します。

ところが、多くの施設ではいまだにPUEが1.7〜2.0程度に留まっており、電力の半分近くが空調や変換ロスに使われているのが現実です。

■ PUEを下げる=利益を増やす。現場の工夫が鍵

データセンターのPUE改善には、以下のような具体的アプローチが有効です。

1. 空調方式の見直し(熱の流れをコントロールする)

  • ホットアイル/コールドアイルの分離設計により、熱と冷気の混在を防ぎます。
  • コンテインメントの導入によって、冷気が漏れず必要な場所に届く構造にします。
  • 外気冷房(Free Cooling)や間接蒸発冷却を利用し、空調にかかる電力を大幅に削減できます。

2. 電源系統の変換効率を上げる

  • 高効率UPS(無停電電源装置)への更新は、変換ロスを減らす基本施策です。
  • 電源分配装置(PDU)の選定と配置によって電力の損失を抑えます。
  • ニーズに応じて、従来の二重変換方式から、より効率的なラインインタラクティブ方式への転換も検討します。

3. 機器の集約・仮想化によるIT負荷効率の改善

  • 物理サーバーの集約化や仮想化によって、ラックあたりの電力密度を高めます。
  • 過剰スペックな構成を見直し、適正なサイジングで無駄な消費を抑えます。
  • 不稼働時間を洗い出し、夜間・休日の自動停止やスリープ化の運用も有効です。

4. 構造・設置環境の工夫

  • 天井高や床下空間の活用によって空気の流れを最適化します。
  • 機器の配置や配線経路により空調効率が左右されるため、設計段階からの工夫が求められます。
  • サーバールーム内のゾーニングにより、高温/高負荷エリアを分離して制御効率を上げることもできます。

■ Asset Marsの支援例:小さな工夫の積み重ねが大きな成果に

私たちAsset Marsは、データセンターの新設・増設・リノベーションにおいて、設備の入れ替えだけに頼らない運用最適化を支援しています。

具体的には:

  • 冷却経路の3Dシミュレーションによるコンテインメントの再設計
  • UPS容量の見直しや系統単位の縮小で、設置面積と熱発生量を同時に低減
  • 局所冷却やエリア単位制御による「小さく冷やす」アプローチの導入
  • 電力契約の見直しや再エネ調達によるトータルコストの最適化

これらの取り組みにより、機材はそのままで年間10%以上の電力削減を実現した事例もあります。PUEは、設備の更新だけでなく「見えない運用構造」を変えることで、目に見える成果へとつなげることができます。

■ まとめ:PUEは経営指標である

PUEの改善は、単なる技術課題ではありません。
それは設計・運用・調達・調整すべてに関わる、施設マネジメントと経営戦略の一部です。

コスト構造を見直し、持続可能なインフラ運営を実現する上でも、PUEへの取り組みは避けて通れません。

Asset Marsは、こうした運用から始まる改善活動に伴走し、拠点特性に合わせた最適な提案を行います。

電力ロスは、見直せば減らせる。小さな気づきと現場の工夫が、未来のデータセンターを形づくっていきます。

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