売却・賃貸だけではない、保有地の新たな活用可能性を考える

使っていない土地をデータセンター用地として見直すという選択肢

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May 15, 2026

企業が保有している土地の中には、明確な使い道が決まっていない土地や、当面の開発予定がない土地、以前は事業に使っていたものの現在は十分に活用されていない土地があります。

こうした土地は、従来であれば売却、賃貸、駐車場、資材置場、物流施設、太陽光発電、将来開発までの一時利用などが主な選択肢でした。

一方で、近年はAI、クラウドサービス、動画配信、IoT、業務システムのクラウド化などにより、データを処理・保管するインフラの重要性が高まっています。その中で、データセンターは単なるIT施設ではなく、電力、通信、不動産、設備、地域インフラが重なる重要な産業基盤になりつつあります。

国際機関のレポートでも、データセンターの電力需要は今後さらに拡大すると見込まれています。また、日本でもデータセンター整備に向けて、電力インフラと通信インフラを一体で考える議論が進んでいます。

このような背景から、使っていない土地や遊休地についても、従来の不動産活用だけでなく、データセンター用地としての可能性を検討する余地が出てきています。

ただし、データセンター用地は、単に土地が空いているだけで成立するものではありません。土地面積、形状、接道、電力、通信、災害リスク、周辺環境、法規制、将来的な運用体制など、複数の条件を確認する必要があります。

そのため、使っていない土地をデータセンター用地として見直す場合、最初に行うべきことは、詳細な事業計画を作ることではありません。まずは、その土地が候補地として検討対象になり得るかを初期段階で整理することが重要です。

使っていない土地に新たな評価軸が生まれている

不動産の価値は、これまで主に立地、面積、用途地域、建築可能面積、周辺需要、賃料水準、売却価格などによって判断されてきました。

住宅や商業施設に向いている土地であれば、開発による収益化が検討しやすくなります。物流施設に向いている土地であれば、幹線道路や高速道路へのアクセスが重要になります。太陽光発電であれば、日照条件や面積、造成のしやすさなどが論点になります。

一方で、データセンター用地として土地を見る場合、評価軸が少し変わります。

もちろん、面積や接道、用途地域は重要です。しかし、それだけでは不十分です。データセンターでは、大量の電力を安定的に使い、通信回線を通じてデータをやり取りし、設備を継続的に運用する必要があります。

そのため、データセンター候補地としては、土地そのものの条件に加えて、電力インフラ、通信インフラ、災害リスク、周辺環境との相性が重要になります。

近年のデータセンター立地に関する研究でも、立地評価は単純な土地面積や地価だけではなく、自然リスク、エネルギーリスク、インフラリスク、環境負荷、地域特性などを複合的に判断するものとして扱われています。

この視点を土地活用に置き換えると、これまで住宅や商業施設には向きにくいと考えられていた土地でも、産業系エリアにあり、一定の面積があり、電力や通信の確認余地がある場合には、データセンター用地として見直せる可能性があります。

反対に、駅前や商業地として価値が高い土地であっても、電力確保や設備配置、周辺環境との相性が悪ければ、データセンター用途には向きにくい場合があります。

使っていない土地をデータセンター用地として見ることは、土地の価値をこれまでとは違う角度から見直すことでもあります。

海外では産業跡地をデータセンターに転用する事例がある

使っていない土地や施設をデータセンター用途で見直す考え方は、海外ではすでにいくつかの事例があります。

代表的なのが、フィンランド・ハミナにあるGoogleのデータセンターです。ハミナはもともと製紙業の町であり、Googleは既存の製紙工場跡地をデータセンターへ転用しました。元製紙工場という既存施設だけでなく、地域の産業インフラ、電力条件、海水を活用した冷却、地元人材などを組み合わせて、デジタルインフラ拠点として再生した事例です。

この事例から読み取れるのは、データセンター転用で重要なのは「建物が空いているか」だけではないという点です。既存施設そのものに加えて、その土地が持つインフラ条件や地域特性をどう活かせるかが重要になります。

もう一つ参考になるのが、ノルウェーのLefdal Mine Data Centersです。同施設は旧鉱山をデータセンターに転用した事例です。地下空間、再生可能電力、低い外気温、物理的なセキュリティ、拡張性などを強みにしており、通常のオフィスや商業施設とは異なる場所が、データセンター用途として再評価された例といえます。

これらの事例は、そのまま日本に当てはめられるものではありません。日本では地震、津波、洪水、用途地域、電力接続、近隣対応など、個別に確認すべき条件があります。

しかし、共通する着眼点はあります。

使われなくなった工場、鉱山、産業施設、港湾近接地、大規模な未利用地などでも、電力、通信、災害リスク、セキュリティ、拡張性といった条件が合えば、データセンター用地として再評価される可能性があるということです。

日本で遊休地や未利用地を考える場合も、単に「売れるか」「貸せるか」だけではなく、インフラ型の土地活用として見直す視点が重要になります。

土地の基本条件は面積だけで判断しない

使っていない土地をデータセンター用地として検討する場合、まず整理すべきなのは土地の基本条件です。

ここでいう基本条件とは、所在地、土地面積、形状、接道、現在の利用状況、過去の用途、周辺環境、用途地域、地盤、造成状況、既存建物や埋設物の有無などです。

ただし、重要なのは、これらを単なる不動産情報として見るのではなく、データセンター用途に引き寄せて見ることです。

たとえば、面積が十分にある土地でも、形状が細長すぎる場合や、接道が弱い場合、大型設備の搬入や将来的な拡張に課題が出ることがあります。反対に、面積はそれほど大きくなくても、形状が整っており、周辺環境との相性が良く、小規模な用途であれば検討余地が出る場合もあります。

また、過去に工場や倉庫として使われていた土地では、既存のインフラや搬入動線が残っていることがあります。その一方で、土壌、地盤、地下埋設物、既存建物の解体費用などが課題になる場合もあります。

データセンター立地の研究では、候補地評価を複数の条件から総合的に判断する考え方が使われています。実務でも同様に、最初から「この土地でデータセンターができる」と断定するのではなく、候補地として残すべき土地と、優先度が低そうな土地を分けることが重要です。

初期段階では、詳細な設計や収支計算よりも、まず土地としての可能性と制約を整理することが現実的です。

電力を確保できる土地かどうかを確認する

データセンター用地として土地を見る場合、最も重要な論点の一つが電力です。

データセンターでは、サーバー、ネットワーク機器、空調設備、監視設備、非常用設備など、多くの設備が電力を使います。特にAI向けの計算処理や高性能サーバーを扱う場合、必要となる電力容量は大きくなります。

近年の研究でも、AIデータセンターの集中立地は、地域の電力系統に負荷をかける可能性があると指摘されています。これは、データセンターの立地を考える際に、土地の有無だけでなく、地域の電力供給力や系統の余力を確認する必要があることを示しています。

土地が広くても、電力供給に大きな制約がある場合、データセンター用地としての検討は難しくなります。逆に、過去に工場などで大きな電力を使っていた土地では、既存の受電設備や電力利用の履歴を確認することで、検討の入口が見える場合があります。

初期段階で確認したいのは、電力確保の可否を断定することではありません。現在の電力契約、過去の使用実績、近隣の変電設備、受電設備を設置するスペース、増強の可能性など、次に確認すべき論点を整理することです。

使っていない土地をデータセンター用地として見直す際には、「土地があるか」だけでなく、「電力を使える土地か」という視点が欠かせません。

通信環境は土地の価値を左右する

データセンターは、データを保管するだけの施設ではありません。外部との通信によって価値を発揮する施設です。

そのため、通信環境も候補地評価に大きく関わります。

光回線が整備されているか、通信事業者が対応しやすいエリアか、複数の通信経路を確保できるか、主要都市や利用者との距離がどうか、通信遅延が用途に影響しないかといった点を確認する必要があります。

日本では、データセンターの整備にあたり、電力インフラと通信インフラを一体で考える動きが進んでいます。これは、データセンターの立地が、土地単体ではなく、電力と通信の両方に左右されることを示しています。

ただし、すべての用途で同じ通信条件が必要になるわけではありません。

大規模クラウド向けのデータセンター、企業のバックアップ拠点、小規模なサーバールーム、エッジデータセンター、地域分散型の処理拠点では、求められる通信品質や冗長性が異なります。

そのため、初期段階では「この土地でどのようなデータセンター用途が考えられるか」を仮置きしながら、通信環境を確認することが現実的です。

通信環境が整っている土地は、データセンター候補地としての評価が高まりやすくなります。反対に、通信インフラの整備に大きな追加コストや時間がかかる場合は、候補地としての優先度を慎重に判断する必要があります。

災害リスクは候補地評価の中心に置く

データセンターは、企業や社会の重要なデータを扱う施設です。そのため、災害リスクが高すぎる土地は、候補地としての評価が下がる可能性があります。

近年の研究でも、データセンター立地において自然災害リスクは重要な評価項目として扱われています。地震、洪水、津波、土砂災害、液状化、停電リスクなどは、単なる不動産上の注意点ではなく、データセンターの継続運用に関わる重要な条件です。

日本で遊休地をデータセンター用地として検討する場合も、この視点は特に重要です。

日本は地震や豪雨などの自然災害リスクがあるため、土地の価格や面積だけで候補地を判断することはできません。ハザードマップ上での位置、周辺道路の寸断リスク、電力・通信インフラの復旧しやすさ、非常時のアクセス性などを含めて確認する必要があります。

ただし、災害リスクがまったくない土地はほとんどありません。重要なのは、そのリスクがどの程度で、設備計画や運用計画によって対応できる範囲なのか、それとも候補地としての優先度を下げるべきなのかを整理することです。

データセンター用地として土地を見る場合、災害リスクは後から確認する項目ではなく、初期段階から候補地評価の中心に置くべき論点です。

周辺環境との相性を確認する

データセンター用地を検討する際には、周辺環境との相性も重要です。

データセンターは24時間365日稼働する施設です。サーバーや電源設備、空調設備、非常用設備などを備えるため、一般的な土地活用とは異なる運用上の配慮が必要になります。

住宅地に近い土地では、工事車両の出入り、非常用発電設備、空調設備、騒音、夜間の運用などについて、近隣との関係を慎重に考える必要があります。一方で、工業地域や物流施設が集まるエリア、既に産業用途として使われているエリアでは、設備用地としての相性が良い場合があります。

また、データセンターは雇用創出効果が大きい施設というより、電力・通信・設備投資を伴うインフラ型の施設です。そのため、自治体や地域との関係では、税収、地域インフラ、災害時のレジリエンス、再生可能エネルギー、排熱利用など、地域側にとっての意義をどう示すかも重要になります。

海外事例を見ると、産業跡地をデータセンターへ転用する場合、単に建物を使い回すのではなく、地域のインフラや産業構造と結びつけて再評価しているケースがあります。

使っていない土地をデータセンター用地として見直す場合も、土地単体ではなく、地域との関係性を含めて検討することが大切です。

売却・賃貸だけでなく複数の活用スキームを考える

使っていない土地をデータセンター用途で検討する場合、最初から自社でデータセンター事業を行うと決める必要はありません。

土地所有者としての関わり方には、土地を売却する形、長期賃貸として貸し出す形、データセンター事業者に候補地として紹介する形、事業者と共同で検討する形など、複数の選択肢があります。

重要なのは、最初から事業スキームを固定しすぎないことです。

まずは土地の条件を整理し、その土地がどのような使い方に向いているのかを見極める必要があります。そのうえで、売却、賃貸、共同事業、事業者紹介、自社活用など、現実的な関わり方を検討する方が進めやすくなります。

特にデータセンターは、電力会社、通信事業者、設計会社、施工会社、設備会社、運用会社、金融機関など、複数の関係者が関わる分野です。

土地所有者がすべてを担うのではなく、候補地としての可能性を整理し、必要な関係者と段階的に話していくことが現実的です。

社内で検討する前に目的を整理する

使っていない土地をデータセンター用地として検討する場合、社内での説明も重要になります。

データセンターは、一般的な不動産活用とは異なるため、社内で理解されにくい場合があります。売却や賃貸と比べると、電力、通信、設備投資、運用、事業者連携などの論点が増えるためです。

そのため、社内検討に上げる前には、なぜこの土地で検討するのか、他の活用方法と比べてどのような意味があるのか、売却と賃貸のどちらを優先したいのか、自社でどこまで関与したいのかを整理しておくことが大切です。

また、現時点で分かっていることと、まだ確認できていないことを分けておくことも重要です。土地条件は整理済みだが電力は未確認、周辺環境は良さそうだが通信環境は未確認、売却意向はあるが長期賃貸も検討可能、といった形で整理しておくと、次の相談に進みやすくなります。

土地情報や検討目的が曖昧なまま外部に相談すると、話が広がりすぎて具体的な判断につながりにくくなります。反対に、入口の整理ができていれば、外部事業者との情報交換や社内判断が進めやすくなります。

検討は段階的に進める

データセンター用地の検討では、最初から詳細な設計や収支計画を作り込む必要はありません。

むしろ、初期段階では検討コストを抑えながら、候補地としての可能性を段階的に見極めることが重要です。

最初の段階では、土地面積、形状、接道、周辺環境、現在の利用状況、用途地域、災害リスクなどを整理します。次に、電力や通信について、確認すべき項目を洗い出します。そのうえで、売却、賃貸、共同事業、事業者紹介など、現実的な活用スキームを検討します。

この段階で重要なのは、いきなり事業化を前提にしないことです。

まずは「候補地として検討に値するか」を整理し、次に「どの点が課題になりそうか」を確認し、その後に「誰と話すべきか」を決める方が現実的です。

このように段階を分けることで、最初から大きなコストをかけずに、土地の可能性を見極めやすくなります。

使っていない土地を見直すことは、選択肢を増やすこと

使っていない土地をデータセンター用地として見直すことは、必ずしもすぐに事業化することを意味しません。

重要なのは、土地活用の選択肢を増やすことです。

売却するのか、賃貸するのか、将来開発まで保有するのか、別用途に転用するのか。その判断をする前に、データセンター用地としての可能性を一度整理しておくことで、土地の見方が変わる場合があります。

特に、住宅や商業施設には向きにくい土地、現時点で開発予定がない土地、工場や倉庫の跡地、産業系エリアにある未利用地などは、従来の不動産活用だけでなく、インフラ型の土地活用として検討できる可能性があります。

海外の事例を見ると、元製紙工場、旧鉱山、産業施設など、従来の不動産開発とは異なる場所がデータセンターとして再評価されています。もちろん、日本では個別条件の確認が必要ですが、遊休地や遊休施設を新しいインフラ用途として見直す発想は、今後さらに重要になると考えられます。

すべての土地がデータセンター用地に向いているわけではありません。しかし、初期段階で可能性と課題を整理することで、売却・賃貸・共同事業・事業者紹介など、次の選択肢を考えやすくなります。

Asset Marsの支援内容

株式会社Asset Marsでは、土地所有者様、不動産会社様、デベロッパー様、遊休地や未利用地を保有する企業様向けに、データセンター候補地の一次診断・スクリーニング支援を行っています。

当社では、使っていない土地や保有地について、土地条件、周辺環境、電力・通信に関する初期確認項目、災害リスク、活用スキームの方向性などを整理し、検討の入口となる情報をまとめます。

当社の支援は、データセンター事業化や電力・通信インフラの確保を保証するものではありません。あくまで、初期段階において「この土地に検討余地があるか」「どの点が懸念になりそうか」「次に誰へ相談すべきか」を整理するための支援です。

住所、概算面積、現在の利用状況、周辺環境が分かる資料があれば、詳細な計画が固まっていない段階でも初期相談は可能です。

保有地・遊休地の新たな活用方法としてデータセンターに関心がある場合は、まずは情報交換からご相談ください。

参考・参照資料

  1. International Energy Agency, Energy and AI
    データセンター電力需要の将来見通し、AIによる電力需要増加の背景資料として参照。(IEA)
  2. 経済産業省・総務省「ワット・ビット連携」に関する公表資料
    日本におけるデータセンター整備、電力・通信インフラ連携の政策背景として参照。(経済産業省)
  3. Erdem and Özdemir, Sustainability and risk assessment of data center locations under a fuzzy environment, Journal of Cleaner Production, 2024
    自然リスク、エネルギーリスク、インフラリスクを含むデータセンター立地評価の研究として参照。(サイエンスポータル)
  4. Google Data Centers, Hamina, Finland
    元製紙工場をデータセンターへ転用した海外事例として参照。(Google Data Centers)
  5. Lefdal Mine Data Centers, Norway
    旧鉱山をデータセンターへ転用した海外事例として参照。(lefdalmine.com)